高校を卒業してから、私は親元を離れて東京に出た。
人の心理を学ぶ大学に行った。
人付き合いも上手になって、それなりに友達もできた。
悠紀のようになんでも話せる友達はできなかったけど、冗談を言って笑ってふざけあって、放課後はお茶しに行ったりショッピングに行ったりする友達もできた。
悠紀には自分の話ばっかりしてたけど、今は割と聞き上手になって人並みに友達の相談にも乗ったりするようになった。
やっぱり私は友達の話を聞くだけで
支えてあげる事も救ってあげる事もできないけど…
それでも充分だって言ってくれる人ができた
あれから何度か、あの頃の悠紀の気持ちを理解しようと手首に剃刀をあててみた。
だけど、それをひく勇気はでなかった。
今考えてみれば悠紀が天国からそれを止めてくれたのかもしれない。
いや、自ら命を絶った奴だから天国なんて行けてないかもしれないね。
悠紀は私の足の下、地面の奥深くの世界にいるのかな。
悠紀のお墓の前に立っても、そこに悠紀がいる気はしなかった。
だから、私は時々、おにぎり二つと緑茶を買って、悠紀と過ごした学校に行く。あの二人で色んな事を話した木に座ってから、そこであの頃と同じ様におにぎりを食べるんだ。
そこには悠紀がいつも座ってる気がするから。
ねえ悠紀。聞こえてる?
私は今、強く生きてるよ。