「先生のバカ!」


私は、突然部屋を飛び出した。


ささいなやきもちを焼いて私が泣いちゃうことはあっても、

部屋を飛び出すなんて初めてだった。


先生が悪いわけじゃないことがわかっていたからこそ、

これ以上先生の悲しい顔を見たくなかった。



「待てよ、直!!」



陸上部顧問で、学生時代は短距離の選手だった先生には

あっという間に追いつかれてしまう。



追いかけて来てくれることを期待していなかったと言えば嘘になるけど、

こんなにも必死に追いかけてくれるなんて…



「先生の顔見て、突然泣いたり飛び出したりするのは…こういうことだよ!私と同じってこと!先生わかってない。そんなんじゃ、学校中の生徒が先生を好きになるよ…」



その時の先生の顔、今でも忘れられないんだ。


ごめんね、先生は悪気なんてない。

何も悪くない。


ただ教師として、生徒を大事に想っているだけ。

その子の力になりたいと願う、素敵な教師なんだ。



先生の腕にガシっと掴まれた私は、そのまま強く抱きしめられた。



「ごめん…直、ごめん。泣かせてごめん…」


泣いてるのは、きっと先生の方だ。

先生は、私を不安にさせないようにいつもいつも大事にしてくれてるのに…