「先生!!」 何焦ってるんだろ、私。 大事な宝物を誰かに取られそうになって必死になる子供みたい。 「おせ~よ。お前がいないから、誘拐されそうになっただろ~!」 ベンチに座った先生が、眠そうな目で私を睨む。 そう言って、先生は視線を雅子さんの部屋の方へ向けた。 「誘拐?大丈夫だった?」 「大丈夫。俺、一途だから。直一筋だから!」 ベンチに座った先生が、にっこりと微笑んで両手を広げた。 その両手の中に飛び込んで、先生の胸に顔をくっつけた。