キキキキーーと鳴くヤモリにも慣れてきた午後9時頃。
さっきまでの不安も消え、楽しく盛り上がっていた。
「体育の先生なんですか?どうやったら、体が柔らかくなりますか?」
咲希ちゃんは、そう言ってみんなを笑わせた。
そんなお茶目な咲希ちゃんも学校の先生に恋をしていた。
先生のおにぎりを食べてる姿に一目惚れしたんだ、と嬉しそうな顔で教えてくれた。
ともちゃんは、卒業した高校の担任の先生がまだ忘れられないでいた。
教師って仕事は、ただ勉強を教えるだけじゃないんだ。
ともちゃんは、その先生に生きること、人を愛すことを教わった。
卒業して1年が過ぎてもまだ、先生以上に好きになれる人に出逢えない、と夜空にため息をついた。
「荒木さんを思い出すね…」
私はポツリと呟いた。
先生は、私の肩に手を回し、その手でぎゅっと肩を抱いた。

