ストークがミアを大統領区へ送り届け、その間に3人は資料に目を通す。
「『武力』が必要なほど、凶暴な相手なのかしらね?」
「‥‥さあな」
語弊があった、床に資料を並べ、這いつくばるように目を通しているのはカロンだけである。
カノーとボルグの二人は初めから作業に参加する気はないようだ。
「カロちゃあん、翡翠(ジェイド)くんは凶暴なコなのん?」
「‥‥カノー、ちょっとは手伝うとか」
「お前の得意分野だ、任せた方が早い」
「‥‥はい師匠」
文句を言いかけた口は、上空から降って来た言葉によってふさがれる。
「兄の名前はジェイド、弟の名前がオニキス。ともにここ鉱山区に住んでいたようですね」
「いた?」
「はい、兄は鉱山の落盤事故で死んでます」
話が続かないではないかと、目を合わせるカノーとボルグ。
「そして一週間後、弟オニキスが死神の能力に目覚めます」
「――どういうこと?」
「‥‥兄のジェイドが死んだのは採掘場だったようです、そこで発見された新種の魔鉱石‥‥『トレディア』」
「新たな魔鉱石‥‥名前から察するに死神の能力をtrade(トレード)する鉱石、か?」
「トレディアはまだ発掘途中だったためほとんど研究されていなかった、とありますね‥‥弟オニキスが死神の能力に目覚めたことで、新種の魔鉱石に『トレディア』と名付けたそうです」
「もう、それも過去系なのん?トレディアは今は無いのね?」
「兄ジェイドの遺体とともに行方不明と、あります‥‥」

