にたぁ、と笑い、赤ん坊は言った。

「シネ」

次の瞬間、携帯電話から煙が出て、バチバチと火花が散る。
いきなり携帯電話が燃え出した。

炎が奈々子の長そでに燃えうつり、またたくまに全身に広がっていく。

「いやーっ、熱い、熱い!」

火は皮膚を焦がし、奈々子は絶叫しながら、ベッドから転がり落ちた。

あっという間に炎は、顔まであがってきた。

床を転げまわる奈々子を見て、赤ん坊が手を叩いて笑えば笑うほど、炎の勢いは増した。

天井のスプリンクラーが作動して、水がまかれたが、まさに焼け石の水だった。

イヤだ……死にたくない……死ぬのはイヤ……。

燃え盛る炎をまとった手を伸ばし、助けを求める。

きゃっきゃっ、とはしゃぐような赤ん坊の声が、じょじょに遠ざかってきこえた。

奈々子の手は、ガクリと下に落ちた――。