さえのことがあってから、何人もの生徒が心と体の不調を訴えており、学校側はカウンセラーの数を急きょ増やしていた。

愛華と亜美が窓際で話していたので、奈々子が行こうとすると、

「おはよ……」

と後ろから小さな声がした。

振り返ると、千尋が立っており、顔色が悪く、ほほが痩せこけていた。

「おはよう。千尋ちゃん、気分悪そうだけど大丈夫?」

「ん……なんか食欲なくて、ほとんど食べてないんだ」

千尋は机に通学カバンを置く。

「あのさ、話があるから一緒にトイレに来てくれない?」

千尋がそう言ったので、奈々子は荷物を置くと、肩を並べてトイレへ向かった。