「アア、オイシイ、オイシイ……」

真っ赤な目から涙を流して、彫刻刀を貪り食っていたさえの動きがとつぜん止まった。

「オオオオ……!」

おびただしい量の血を吐き出した。
彫刻刀の砕けた刃先が食道や胃を傷つけたのだ。

制服を血まみれにさせながら、さえはドサリと倒れる。
どばどばと口から血を流しながら、さえは動かなくなった。

奈々子は恐怖に支配され、ただそれを見ていることしかできなかった。

「痛い……痛い……」とすすり泣く山形の声が美術室に響いた。