なんて、優しくてかっこいい人なんだろう。誠実そうで、ちゃらちゃらしている他の男子たちとは全然違う空気を持っている。
奈々子は一瞬で心を奪われたのだった。

近藤零という名前で、隣のクラスだと知り、いつも目で零を探すようになった。
学校での毎日が辛くても、零を見ると、悲しみも吹き飛んだ。

愛華と付き合っていることを知ったときは、ショックだったが、零を遠くから見れるだけでも奈々子は充分だった。

今日の零は、なんだか疲れたような顔をしており、少し心配になった。

零が横を通り過ぎると、香水のいい匂いがして、奈々子は胸をぎゅっとおさえる。

沈んでいた心に日がさしたような気分になり、奈々子は踊るような足取りでトイレへ入った。