こっちむいて伏見!




彼は半分だけ身体を起こしたまま動こうとはしない。


そして
やっと思い出したように机の上に置いていたメガネをかけた。



「…えっと、別に…、
用事もないし。
アタシもう遅いし帰るわ…」


やっと言えた言葉はそんなこと。


本当はあの先輩の言葉を確かめたかったのに。


思ってることと違うことを口にしてしまう。



先輩の言ってたことが本当なら。


伏見だってアタシに話があるはずじゃないの。


どうして
いつまでもいつまでも煮え切らないんだろう!


それなら
アタシが素直になればいいだけなんだけど。

それもまた難しい。


こういうのってどっちもどっちか。



でも。

こころのどこかでなんとなく、
彼はずっとアタシの近くにいてくれるだろうという安心感もあった。