「いや、今日はもういい。
暗くなってきたし。
もう帰るわ。悪かったな」
そう言って彼は自分の席に置いてあるカバンを手に取る。
あ、ちょっと待って。
アタシは彼のその仕草を見ながら同じように、
慌てて自分の席まで戻りカバンを取ろうとする。
「帰るんやったら一緒に帰ろ?」
でも彼にアタシの言葉が届いたのか届かなかったのか立ち止まることなく、
教室のドアの方へと向かう。
「待ってって!」
さっきよりも大きな声で彼に言うけれどそのまま教室を出ていってしまった。
聞こえてるけどわざと聞こえないフリしたのか、
聞こえないくらいにチップが見つからないことがショックだったのか。
そんなのどうでもいいけど。
もう、置いていかないでよ。
アタシは彼が出て行った後を追いかけて同じように教室を出る。
「あ…」
廊下を見てももう彼の姿はなかった。
せっかく一緒に帰れると思ったのに。

