びっくりした表情をした伏見が教室の後ろの壁に持たれこんでいた姿が見えた。
「あ…、伏見…」
アタシが教室の入口から声をかけると彼もアタシに気づき、
こっちを見た。
「なんだ、オマエか…」
「なんだ」とは何よ?
ま、いいや。
さっきの物音と声は伏見だったとわかって安心して、
アタシは教室に入り、
彼の方へと歩み寄る。
「こんな時間になにやってんの…?」
「オマエには関係ない。
オマエこそ…」
「アタシ?
アタシはこないだから持って帰るの忘れてたプリントを…」
アタシが近付くほどに彼は少しづつ距離を取ろうとする。
襲われるとか思ってんのかしらん?
いくらなんでも女性のアタシからそんなことはしないもんね。
「それやったら、おっ…オマエの席ってあっちやろ!
こっち来んな!」
「せっかくこうしてふたりきりになれたのにもったいないやんか」
あ、そうだ。
ふたりきりなんだ。
自分で言っておいて改めて思う。
「…はぁ?
何言ってんの?オマエ…」
なのに相変わらず伏見のそっけない態度。
どうにかならないもんですかねえ。

