「ねえ聞いた?」
「ええ、あそこの704号室、また入居者が消えたって」
「ていうかねえ、毎度のことなのに、どうして売るのかしら」


知らなかっただけだった。
噂や都市伝説なんて興味もなかったし、ましてや霊感がある訳でもない。
北向きの出窓からは、いつもの街並みと住人達のそんな会話。


「あなた、ご飯よ」
「……ああ」


起きたら目の前には見知らぬ女がいて、いくら開けようにも一向に開くことのないマンションのドアと。
虚ろに俺を「あなた」と呼ぶ女と、行方知れずになったらしい俺。
唯一あるクローゼットの中身は、たくさんの見知らぬ男達の腐った死体だらけだ。


「あなた、」
「……今行くよ」


切り取られた空間で、いつ終わるとも知れない紡がれいく非日常の茶番劇。
704号室に新しい住居人が訪れたとき、さて俺は、どうなるのだろうか。



47,704号室【エンド】