「何か間違えちゃったかなあ」


誰にともなくそう零し、立ち上がって尻に付いた砂を払った。
何かを間違えた。
たぶんそれに、間違いはない。
別に構いやしないけれど、それにしたって急な話だ。
あれをこうしてこうなればそうなる、みたいな確証などなかったけれど、まさかこうなってこんな場所に投げ出されるとは思わなかった。


「どうしたもんかね」


溜め息と共にその言葉はぽっかりと浮かんだ。
どうするもこうするもない。
結果はすでに出ている。
こうなったことは現実。
現実、との言い回しはもしかしたら語弊があるかもしれない。
真実、この方がしっくりくる。
あれこれ考えても仕方ない。
待っているのが一番得策な気がした。


「よいしょっと」


また座り込んで、胸ポケットにあった煙草に火を点けた。
煙草があるのは可笑しな話だが、今となってはそんなことどうでもいい。
暇潰しにはもってこいだ。


「迎えはまだかな」


例えば首を吊ったなら死ぬもんかな、と思っただけ。
試してみたなら、本当に死んだだけの話。



22,例えばまさかの話【エンド】