絢爛でいて賑やかな会場。


古城を貸し切ったパーティには、色彩鮮やかな女性たちと豊かな笑みを浮かべる男性陣。



もっとも、ツィツェーリエには両者の頬笑みは、私腹を肥やそうとしている卑しいものにしか見えない。



「お嬢様、眉が寄っております」



漆黒のスーツに身を包んだヴァルターが、そっと背後から苦言する。



「あら、失礼」



それぐらいわかってるわ、と言いたげに口角を上げて、黒いベアトップのドレスの主が答えた。



手にしたシャンパングラスはしゅわしゅわと物静かな音を立てるばかりで、一向に減ることはない。



それ以上何も言うことはなく、ヴァルターは右斜め後ろからツィツェーリエを見守っている。



会場はカルテットの静かな音楽が流れているにも関わらず、人々の会話が重なって喧騒に包まれていた。



「ヴァルター」



会場を眺めることに飽きたツィツェーリエが顔を右斜め後ろへと向ける。