―――――――――――
―――――――――

「おはようございます、お嬢様」



窓を開け、春の陽気を部屋に取り入れているとヴァルターの声が響いた。



「おはよう」



シンプルなワンピースに身を包んだツィツェーリエが振り返る。



「あら、眼鏡変えたのね」



窓枠に腰を預け、嬉しそうに顔を綻ばせる。



ヴァルターの目元を飾るのは、銀のフルリムの細い眼鏡。



「よく似合ってる。素敵よ」



ツィツェーリエが褒めると、ヴァルターは小さく感謝の言葉を述べるだけだった。



緩やかな風が、彼女の髪をさらさらと撫でる。



「本日のご予定は特にありませんが……」



これが自分の仕事だと言わんばかりに、ヴァルターは続ける。



「じゃ、ちょっと庭でも散歩してくるわ」



窓を開けたまま、ツィツェーリエは近くのストールを手にしてヴァルターの立つドアへと向かう。