スロー・ステップ・スロー

小さな沈黙のあと、ヴァルターは眉一つ変えず、口を開く。



「申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます」



「じゃあ命令だったら?」



言葉のやり取りを楽しむように、ツィツェーリエは調子を狂わせることなく続ける。



「なおさらお断りさせて頂きます」



今度はすぐさま答えが返ってくる。


きっぱりと、いつもの調子で。



一瞬間をおいて、ふふ、とツィツェーリエから笑いが零れた。



「紅茶が飲みたかったの。部屋に持ってきてちょうだい」



ゆったりと流れていた空気が、急に時間を取り戻したかのように動き出す。



「お電話を頂ければ、すぐにご用意致しましたのに」



ドアへと歩き出したツィツェーリエに、ヴァルターは申し訳なさそうに答える。