彼女自身、先ほどのメイドがどのような問題を抱えているかは知っていた。


噂好きのメイドたちに飽きることのない話題を提供しているのが、あの新人メイドだ。



「意味がなかったようなので、代わりに、と頼まれまして」



「なら、貴方の部屋でするべきではないわね。誘ってくださいと言っているようなものよ?」



小さな一人掛けのソファに腰を下ろしながら言うと、ようやくヴァルターの顔が曇った。



「以後、気をつけます」



ツィツェーリエに向き直り、丁寧に腰を折る。



「でもいいのに、女の一人や二人ぐらい」



革張りのソファのひじ掛けにもたれながら発せられる声は少し皮肉を含む。



「いえ、私はお嬢様に仕える身ですから」



顔を上げ、しっかりと視線をツィツェーリエに向けながら、はっきりとヴァルターは口にする。



「貴方だって男でしょう?」



ツィツェーリエの声にはどこかからかうような、面白がるような色も追加されてきた。


意地悪そうな上目遣いで、楽しそうに微笑む。