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「滑稽よね」
丁寧に磨かれた黒色の車の後部座席で、ヴァルターが運転席に腰を下ろすと同時にツィツェーリエは呟いた。
「お嬢様」
「今ここには私と貴方しかいないのよ? 愚痴のひとつぐらいいいでしょう?」
たしなめるような声にも動じることなく、溜め息を零す。
自分の左側に、外した手袋をそっと置いた。
「爵位を継いだのは兄なのに」
エンジンが低音を響かせ、ゆっくりと車が動き出す。
「それでもお嬢様はグレーフィン(伯爵令嬢)なのですから」
「今は妹よ」
ツィツェーリエが外に向けていた視線を運転席に動かしても、忠実な執事は前しか見ていない。
対向車線のヘッドライトに、ヴァルターの眼鏡が反射する。
「滑稽よね」
丁寧に磨かれた黒色の車の後部座席で、ヴァルターが運転席に腰を下ろすと同時にツィツェーリエは呟いた。
「お嬢様」
「今ここには私と貴方しかいないのよ? 愚痴のひとつぐらいいいでしょう?」
たしなめるような声にも動じることなく、溜め息を零す。
自分の左側に、外した手袋をそっと置いた。
「爵位を継いだのは兄なのに」
エンジンが低音を響かせ、ゆっくりと車が動き出す。
「それでもお嬢様はグレーフィン(伯爵令嬢)なのですから」
「今は妹よ」
ツィツェーリエが外に向けていた視線を運転席に動かしても、忠実な執事は前しか見ていない。
対向車線のヘッドライトに、ヴァルターの眼鏡が反射する。



