カラン…


ある日僕は見知らぬ街の裏通りにある小さな喫茶店に入った。


「いらっしゃいませ。」


店の中に客はなく、アゴ髭をはやした品のいい男性が1人、店の掃除をしていた。
マスターだろうか…。


「あの…まだ早かったかな?」


僕が尋ねると、


「いいえ。構いませんよ。どうぞ。」


と言って男性は笑顔で僕をカウンターに通した。


少し古びた店内には、アンティーク調の照明やテーブル・椅子などがバランス良く置かれ、落ち着いた雰囲気だった。


「コーヒーをください。」

僕はタバコに火を点ける。

マスターは手際良く準備を始めた。