ポチは壁から宿屋の様子を見守っている。
「レースさんの親父さん、侵入者が来て罠が発動した後の事は考えて作ってない」
たしかに。
その通りだ。
カラクリは宿屋を壊して発動する。
地下は水びたし。
床には穴があき、部屋の天井は落とす。
ここの壁は、人が入れる空間があり、とても薄い。
よくシルルクの気候でこの宿屋が壊れなかったと思う。
いや、壊れても父親がいた頃は補修ができたのかもしれない。
しかし、これだけ兵士が大暴れし、これ以上に罠を発動させたら。
…父親は、本当に身を守るためにこの建物を造ったのだろうか。
むしろ、相殺でも1人でも多くを巻き込んで敵を倒せれば……そんな憎しみのようなものが感じられる。
ドーン。
ポチの部屋当たりで爆発音がした。
振動が建物全体に伝わり、暗闇の空からぱらぱらとホコリが舞う。
「あの部屋の床下には火薬が敷き詰めてありました」
「マジで!?」
ポチが目の下をぴくぴくさせて驚く。
「この国に、貴方の居場所はすでに無いに等しいんです」
いや、最初からそんなものは無かったのかもしれない。
僕はレースさんに手をさしのべる。
「リュウズは貴方を人間として受け入れます」
彼女は僕の手相を眺めるように見つめた。
息を飲み、僕の小さな手を両手で包み込む。
「……お願いします……」
顔を伏せ、僕の手をギュッと力強く握る。
ほっとして息つく僕を、ポチは、にぃっと笑った。

