妖魔03(R)〜星霜〜

「仕方がないさ。誰もが見知らぬ人間を受け入れられるわけじゃない」

子供は純粋ゆえに、警戒するか興味を持つかの二つに大きく分かれる。

大人の場合、きっかけがない以上は最初は疑ってしまうだろう。

物を知っているだけあって、おいそれと信じてしまうのは危険だと解っている。

「2週間で去るからな。信じろなんて言わないよ」

「お兄さん、寂しくないのかい?」

「村の誰かが俺の事を信じた時、寂しいと思うかもしれない」

別れの時は必ず来る。

俺を信じた妖魔は寂しく思うだろう。

俺が信じた妖魔に寂しさを感じるだろう。

でも、今の俺はすでに寂しさに晒されている事は間違いない。

俺が信じて死んでいった美咲の事を思えば胸が締め付けられるからだ。

だからといって、表に出すつもりはない。

きっとカメリアも信じた人を待って、寂しさを感じているはずだろう。

「お兄さん、色々と経験してきたんだね」

俺の顔を見つめるカメリアは何かを読み取ったのか。

「カメリアだって、生きた年数分、苦労してきただろ」

「それは、私がおばあさんって言いたいの?」

「まさか、こんな美人がおばあさんだなんて誰も思わないさ」

「胡散くさいねえ」

「旅人だからな。それくらいが丁度いい」

所詮は旅人。

誰かと通じ合う事はないほうがいいのかもしれない。

「私はお兄さんの事、信じてもいいと思うよ」

「そうか?」

「ええ、チェリーに優しいもの」

「それは、カメリア目当てで近づいたのかもしれないぜ?」

「おや、嬉しいねえ」

カメリアの方が、一枚上手なのかもしれない。

カメリアは頭を俺の腕にもたれかけた。