妖魔03(R)〜星霜〜

カメリアは近づいてきて、隣に身を寄せる。

「おや、お兄さん、結構いい面してるじゃない」

「はは、カメリアも美人だと思うけど」

俺は何を言っているんだろうか。

余裕はないのだが、避ける事でカメリアを無駄に傷つけてしまうのではないかと思ってしまった。

いや、俺自身が誰かに癒しを求めているのか?

孤独を塗りつぶすために?

浮気をして子鉄ちゃんに謝ろうとしているのに、まだ甘えた事をぬかしているのか。

カメリアはどうなんだろう。

夫の帰ってこない日々が寂しくて、今みたいな行動をとっているのか。

「はは」

「え?」

笑みを浮かべると、先ほどの怪しい雰囲気は消える。

身はくっつけたままだけどな。

「冗談冗談、旅人のお兄さんに身体を許すほど貞操観念は緩くないよ」

「そりゃそうだよな」

誰もがお吟さんみたいに軽い人ばかりじゃない。

当たり前の話じゃないか。

「ありがとうね」

しばらくして、宙を見つめたカメリアがお礼で話を切り出した。

「カメリアにお礼を言われる事、したか?」

「チェリーの事」

「ああ、昼間のな」

自分の娘が泣いて帰ってきたら、親としては心配してしまうところだしな。

多分、自分の飯が上手かったと褒められた事よりも、チェリーを泣かせなかった事の方が、カメリアにとっては大事なのだろう。

「事実を言っただけさ」

「へえ」

「何だよ?」

「お兄さんの事、最初は疑っていたんだけどね」

この島の村の外から来た奴の事をすぐに信じられないのは当然だ。