妖魔03(R)〜星霜〜

「その情報、どこから仕入れた?」

椅子に座って安らいでいるティアは嘘泣きをする。

「丞さんって、生まれた頃からドブ川で暮らしてたんですねえ」

「捏造グッバイ!」

会話の通じないティアにアッパーをくれてやり、俺はティアが座っていた椅子に着席する。

「全く、半端のない疲労の上に重石を乗せようとするなよ」

「丞さん、オツですう」

心にも思っていない言い方によって、首を重たげに下に落とす事となった。

「少し外に出てくる」

農作業の予想以上の疲労は、余裕を生み出さない。

腹を空かしながらも疲労を背負いたくないと、椅子から立ち上がって夜の帳に身を投げ出す。

「はあ、ろくでもねえ」

村の中に設置された手作りベンチに腰をかけている。

ティアの奴、昔からあんなだったのか?

家族がいる気配はないし、昼間は何をやってるんだろうか。

興味がないといっちゃ、嘘になる。

しかし、一日そこらで一人の全てを知るなんて不可能だろう。

妖魔は100年以上はゆうに生きられる生物だからな。

「ティアの事を頭の中で思うなんて、オーバーヒートしてるとしか思えないぜ」

絶対に恋心を抱くような奴じゃない。

美咲とは何から何までかけ離れている。

子鉄ちゃんはおかしなところはあったけど、まともな部分もあった。

ティアの場合、まともな部分があるとは思えないんだがな。

「おや、お兄さんじゃないの」

「カメリア?」

声の主の方を向けば、風呂に入った後なのか、艶やかな青髪を靡かせたカメリアがいる。

恋心を抱くとするならカメリアのほうだ。

「さっきお湯で汚れ落としたんだけど、何かついてる?」

「とても綺麗な髪をしてるなと思ってさ」

「おや、人妻を口説くなんて、危険な事がお好み?」

魅力はあるところだが、誰かと身体を合わせる余裕はなかった。

肉体的疲労もあるだろうが、心もまだヒビが入ったままだ。