「俺、お前が分からない」

「何?」

「俺、お前を殺そうとした。だが、俺を殺さなかった。そして、お前、俺に頭を下げる。それは敵にする行為ではない」

警戒している姿勢を少しだけ緩めている。

「殺そうとしから敵って決め付けるのは早いと思うぜ。まあ、苦しい思いはしたけどさ。あんたは良い奴じゃないか」

「俺、良い奴?」

「最初は俺が悪いことをしていたんだから、掟のために殺そうっていうのは理解できる。でも、あんたは掟を破ってまで俺を逃してくれた。良い奴以外の何者でもないだろ」

世の中は、やられたらやり返すっていう選択際だけではない。

「俺のところにはこんな言葉があるんだ。昨日の敵は今日の友ってな」

「友、おかしな奴だ」

「かもしれないな。でも、お願いしてるのはこっちなんだ。頭を下げるのは当然といっていい」

何とか解ってもらうために、もう一度頭を下げる。

「どうか頼む!あんたにも迷惑をかけるかもしれない。だけど、世話になった分は返してやりたいんだ。あの世にいるあいつの気持ちを、少しでも楽にしてやりたいんだ!」

これで解ってもらえなければ、魔王の古城に特攻する他なくなってしまう。

無理かもしれないな。

だって、俺は余所者だし、古の水とやらを持っていこうとした男だ。

虫が良すぎるか。

「名前は?」

「え?」

「名前、聞いている」

「葉桜丞」

「変わった名前だ」

少しだけ笑みを浮かべて、警戒を解いた。

「俺、ウッド=ロータス」

「俺を信用してくれるのか?」

「全部じゃない。でも、少しだけ、聞いてやる」

やはり、ウッドに頭を下げてよかったかもしれない。

ウッドは少し警戒心は強いが、純粋であり素直な奴なんだろうな。