顔を洗い終えた俺はティアの家に戻った。

しかし、扉は開けずに窓は開けているようだ。

「はあ」

俺は窓から入ると、ティアが一人で食事をこなしていた。

「お前、またそんなに身体に悪いもん食べてるのかよ?」

「丞さんには上げないですよう。これはティアの分ですう」

「いい。それより、食材はどこにある?」

「生のままで食べるんですかあ?丞さんはそこらにいる家畜と一緒ですう」

「豚箱で余生を過ごせ!」

「ウキュ!」

蟷螂拳を眉間にぶちかまし、家の中を漁り始めた。

ゲームの勇者のようだが、勇者であるが故に許される。

「茄子、人参、大根、色んな物があるな」

ただし、肉はないようだ。

「野菜炒めでもするか」

薪が用意されたかまどにマッチで火をつけて、鍋を温める。

その間に包丁で色々切ったり、洗ったりと作業を済ませていく。

後はお手軽簡単、油をたらして軽く炒めていく。

味付けの調味料をまぶして、皿に移すと完成。

「さて、いただきます」

すると、横から出てきた箸が、いくつかの具を強奪していく。

「おい」

「もきゅもきゅ、こ、これは!?」

ティアが劇画チックな顔になりつつも、動きを止めた。

更に、もう一度繰り返す。

「もきゅもきゅ、ま、まさか!?」

「俺に同じ技が通じると思うな!」

鼻の穴に指をつっこんで、振り回す。

「ひ、ひどいですう。丞さんの腕前を評価してあげようと思ったのに、本当、やる事はろくでなしそのものですよう」

「どうせ、ろくでもない評価しか出来ないんだろうが」

俺は自分の作った濃い料理を朝から食し始めた。