「ううん」

鳥の鳴き声が、耳に刺激を与える。

深層意識からの生還。

寝た気がしないものの、疲れは取れている。

しかし、頬の辺りが痛い。

よく見ると、俺の頬をティアの片足が踏んづけているようだ。

ティア本人は眠っているようだが、寝相の悪さは天下一品だ。

「おい」

足を持ち上げて、自分も立ち上がる。

ティアは頭から床へと倒れこみ、目覚まし代わりの鈍い音がした。

「い、いたいですう」

頭をさすりながら、ティアが立ち上がってくる。

さすがに、不意打ち攻撃には弱いらしい。

「お前はベッドで寝られないのかよ」

「丞さんに安心してもらおうと思って傍で寝たのに、人間とは思えないような仕打ちですう」

「お前の寝相の方が、人間としてはやってはならない事をしていたぞ」

「丞さんはこじんまりとした心の持ち主ですねえ。本当、社会不適合者まっしぐらですう」

「布団の上で永遠に寝そべってろ!」

ティアにパチキをかまして、朝の目覚めの運動を終了させる。

「さて、顔でも洗いに行くか」

家の中に水道らしきものがないので、近くにある井戸まで行かなければならない。

外に出ると、村人達も目覚めを迎えて散歩をしているようだ。

今の時間が何時かわからないものの、日の明かりからいえば早朝らしい。

「元気だなあ」

「あ!お兄ちゃん!」

チェリーとカメリアが、家から出てきたところであった。

「うっす、よく寝たかよ?」

「うん!今日はいつお話してくれるの?」

「チェリー、朝っぱらからお兄さんに負担をかけちゃ駄目よ。ほら、お兄さんも、やる事あるんでしょ」

「えー!」

「また夜な」

俺はカメリアの促しによって、チェリーとの絡みを断ち切って顔を洗いに行くこととなった。