思い出せ。

意識下でのリアルタイム化の発生原因は記憶のどこかに潜んでいるはずだ。

島に来る前までは記憶を探る事はあれど、存在はしなかった。

美咲が死ぬ時もなかった。

村に来た時にもこれといった変化はない。

ならば、親父と出会ってからか。

「そうか、コアか」

親父から渡されたコアを身体の中に入れた事による変化だろう。

それ以外にはないはずだ。

「ご明察通りでしょう」

「郁乃母さんが、コアに何かしたのか?」

「意識を分離させてコアに仕込んだ。それだけでしょう」

「それだけって、物凄い事だと思うけどな」

コアを介して他人の奥底まで入り込むなんて、覗かれてる感じがして嫌だな。

「だからといって、他人を操れる事はないでしょう」

「対話までか」

母さんの思念体の意識がどれだけ続くのかは謎である。

俺に何か伝えたい事でもあるのだろうか。

「でもまあ、久々に会えたのは嬉しいよ」

「私は丞が変な方向に成長していたので心配したでしょう」

「変な方向って、どっかおかしいか?」

「母さんと寝たりするのは健全とは言えないでしょう」

「記憶を探ったのか」

「どんな状況であれ、私は悲しいでしょう」

俺としては、どうしようもなかった。

いや、お吟さんと寝た事について、嫌だとは言わない。

「それも流れって奴だぜ。不幸とは思っていねえし、後悔もしちゃいねえよ」

「本当、蛍にそっくりでしょう」

「母さんがどんな理由であいつにコアを託したのかはしらねえし、離れる事が愛の形で正しかったとしても、母さんを一人にしたあいつを認めやしねえよ」

べったりするのが全てじゃないにしろ、母さんの死ぬ間際にも帰ってこなかった奴を許すわけにはいかない。