「何故、日本に住んでいたのに、ここに?」

「私の考え方は妖魔達とは違っていた。だから、離反しただけの話だ」

自分達だけの帝国を捨てて、一匹で世界に出たのか。

「妖魔の里には暗号があると聞いたんだが」

「私は上層部の妖魔だ。暗号など取るに足らない」

上層部の妖魔がいきなり組織を裏切るのかよ。

組織としては混乱しただろうな。

「私は世界を見たかった。ただ、それだけの事」

「妖魔の里は、利己な目的に賛同してくれなかったのか」

「何とでも言い方はあったが、生憎、私は正直者なのでね」

隠し事をせずに、全て話したのか。

確かに、自分の身の上話を出会って5分程度の妖魔にベラベラと話している。

「それで、離れ小島に辿り着いたわけか」

「当初は飛行機など存在しなかった。舟で日本を出たのだが台風に見舞われて、島に辿り着いた」

よく生きていたと思う。

途中で能力を使ったのかもしれないけどな。

「数が増えているということは、他にも妖魔が存在していたのか」

「都合のいい事にな。私以外に日本語を話せる者がいなかったから苦労したが、今の状況を見れば解るとおり、日本語は浸透している」

変鎖の問題はどうなっているのか。

「変鎖は、レインが行ったとか聞いたが」

「私以外にも人間の姿に近い妖魔はいたがごく僅かだ。私には変鎖の術をかける事が出来なかったが、レインがそれを可能にした」

古の水を発見し、使用したのか。

人数が少なくても、魔力を含んだ水を飲めば変鎖を可能にする。

それはお吟さんが実証していた。

「それで、何で俺の質問に素直に答えてくれるんだ?」

「さっき言っただろう。久々の日本妖魔に会えたんだ。私は嬉しいのだよ」

他の妖魔達は日本の事など知らないからな。

同郷の者に親近感を沸くのは解るけども。

「でも、俺が悪い奴だったらどうするんだ?」

「君が悪い者ならば、ウッドは世界には存在しないだろう」