ウッドの後に続いて、森を5分程度歩いた頃だった。

小さい柵の向こうには、村らしき場所が存在していた。

見れば、数軒の家や畑が並んでいる。

家はお吟さんが住んでいたロッジに似ている。

他には、変鎖にかかった妖魔達が仲良く歩いたり、畑を耕したり、物を運搬したりしているようだ。

「人間の姿になっているのか」

「俺達、人間の格好、素晴らしいと気付いた」

自分達を追い込んだ人間達の姿になるのは抵抗がないのか?

村の妖魔達は頑迷ではないという事か。

「変鎖、人間になる事はレインから?」

「ああ、本当に感謝してる」

田畑を作る方法を身に付け、生き延びる術を得たというわけか。

更に言えば、能力も使えるから自然の力だけに頼らなくてもいいわけだな。

言ってみれば無から有を生み出すんだから、恐ろしく感じる。

妖魔の里の者達も人間から知識を得、進化していったのだろうか。

「お前たちに迷惑をかけたくないから、出来るだけ早く村を去りたいと思っているんだが」

「それは、俺やお前、決めない」

「何?」

自由意志で立ち去れるわけではないのか?

まさか、村の事を表に出さないために、死ぬまで暮らせというのか?

「長老の意思」

「いるのか?」

「村で最古の妖魔」

どれだけの歴史を見てきた妖魔なのか。

人間が島の占領をしてからも、耐えてきたのかもしれない。

じゃあ、外から来た俺に、何かの罰を与える可能性もあるか?

ネガティブに捉えすぎだろうか。

村に入った以上は長老に会い、帰る方法を聞くしかないだろう。

長老の家に向う途中、妖魔達は不思議な目で俺の事を見ていた。

確かに、衣服も違うし、髪の色も銀で珍しいんだろう。

村の妖魔達は様々な色の髪をしているが、銀髪の妖魔はいない。

衣服は、白に赤の模様が入った長袖と長ズボンで民族衣装のようだ。

もしかすると、見慣れない余所者だから、敵視しているかもしれないな。