妖魔03(R)〜星霜〜

「持国さんの娘が消えたっていう話、聞いたか?」

「あの不思議な女の子か?」

「俺は一度も実物を見たことねえんだよ。持国さんは可愛がってたようだけどな」

「噂では口が利けないらしいがな」

「やってられないよ。早く出たいのに娘探しなんてさ」

「お前が好んで誰かの下についたんだ。お恵みも貰ってる分、文句を言うなよ」

「持国さんに付いていけば早く出られると思ったんだけど、まだまだかかりそうだな」

後はどうでもいいような話が続いている。

壁一枚の距離で冷や汗ものだが、やり過ごせたみたいだ。

話に出ていた持国は、4派閥のリーダー格の一人。

他に増長、広目、多聞とあり、力は均衡しているようだ。

各グループは巨大ビルを一つずつ占領し、大量の物資を蓄ながら部下も揃えている。

どこの傘下に入っても、出られないという同じ末路を辿るので興味がない。

しかし、持国に娘がいるという情報を初めて聞いた。

仕方のない事なのだが、一人でいるせいか情報が回ってこない。

「口が利けない?」

確証はないのだが、一人だけ心当たりがある。

確認を取りに帰還しようにも、持国の部下がいるので家から出られない。

時間潰しとして他を探して見るとしよう。

「これは」

油や醤油、携帯式ガスコンロなど、便利なものが一式残っている。

料理など無縁と考えて、放置しておいたのか?

派閥にいると、小さい物に目をくれないという大切な心を忘れているのかもしれない。

いや、ビルだと携帯ガスコンロは必要ではないか。

これからは食べ物の焼成や、色々な道具の消毒が出来る。

しかし、ガス缶がなければコンロは働かない。

外界に持国の部下の気配はないが、探りを入れなければならない。