俺は旅用のコートに沢山の物が入る大きめのリュックを背負う。

お吟さんはジャージという身軽な姿のままだ。

「丞ちゃん、必ず帰ってくるのじゃぞ」

龍姫がハンカチを口で咥えながら、名残惜しそうな目つきをしている。

「何かあった時は頼んだぜ」

改革派、イヴァン、テンプルナイツなどの組織が日本に何かをする可能性もある。

改革派とテンプルナイツの争いが起これば、色んな人たちにも被害が及ぶ事になるだろう。

「丞ちゃんの言う事なら、ワラワは喜んで聞こうぞ」

「ありがとう」

龍姫の力ならば、何とかなる事も多いだろう。

「よし、お吟さん、行こうか」

「世界に規格外がいればいいアルなあ」

俺の寝てる横で色々されても、困るところである。

「はあ」

生を受けて十六年。

ずっと日本で暮らすと思っていた。

俺は、一年ちょっとしか通う事のなかった学校を見た。

「守れるようになるから」

今度こそ、失敗は許されない。

二度と誰も失わない。

新たなる決意を胸に、世界へと足を踏み出した。




『完』