翌日。

俺はげっそりしながら、ビルの前に立っていた。

隣には艶々のお吟さんに、いつもの元気な龍姫がいる。

昨晩、ゲームを途中で切り上げた後、お吟さんは獣と化した。

龍姫だけかと思いきや、俺も巻き込まれる事になる。

しかし、二人とも長生きしているだけあって、タフだった。

「歩いているだけで疲れるって、若者としてはどうなんだろうな」

一歩歩くごとに寿命が縮まっているのではないかと思う。

「丞ちゃん、大丈夫かえ?」

心配そうな言葉をかける割には笑顔だ。

気付けば、お吟さんよりもノリが良かったのは龍姫だったのかもしれない。

やはり、龍姫も侮れないところがある。

「鍛錬が足りないアル。もっと血を滾らせるアル」

お吟さんはまだまだやりたかったのだろうか。

俺は人間としては普通である。

弾は限られており、絶倫ではない。

「これから出るってのに、元気なしじゃ様にならねえな」

背伸びをして、自分を切り替えた。

「うっし、じゃあ、行くか」

「丞ちゃん、これを持って行くが良い」

龍姫から渡されたのは通帳であった。

「おいおい、こんなの渡していいのかよ?」

通帳がなくては生活できないのではないのだろうか。

「ワラワは丞ちゃんの事を信じておるからのう。それに、そこにある金額は全て使ってよい」

通帳の中身は、予想よりもゼロの数が多かった。

何故、これほどの資金があるのか。

「昨晩の事、ワラワには良い思い出じゃ。じゃから、その金額は等価であってもおかしゅうない」

思い出を金で比べるのはどうかと思うのだが、くれるというのなら貰っておくのも悪くない。

逆に遠慮しすぎるほうが、悪い気がしてくる。