きっと、好きなんだろう。

「えっと、紅玉」

先ほどから黙ったままの、紅玉にお茶を渡そうとする。

「ありがとうございます」

一つ礼をすると、ペットボトルを受け取った。

「あの時は、ありがとうな」

冬狐の時、イヴァンの時。

紅玉は本当に活躍したと言って良い。

しかし、紅玉は無表情な顔をしているだけであった。

「申し訳ございません。私の頭の中にはあなたの記憶がございません」

「そっか」

記憶がないのは、当たり前の話だった。

「何があったのか知らないのに言うのは何なんだけど、紅玉の龍姫に対しての気持ちの凄さを、知ったよ」

「私にとって主を守る事こそが、使命でございます」

「上司思いな部下が傍にいるって、幸せ者だと思うよ」

「いえ、当然の事でございます」

紅玉は褒められる事に慣れていなかったな。

言われすぎるのも、心地の良いものではないだろう。

「プハァ、やっぱりコーラに限るのじゃ!」

口元を拭きながら、満面の笑みを浮かべる。

子供のように見えるが、裏ではお吟さんと色々としているのだろう。

欲求不満なのか、下衆の勘ぐりを広げてしまう。