疲れを癒すために横になる。

目を閉じれば、浮かぶのは家族だった頃の他人。

偽りの笑顔を浮かべながら、頭の中では何を考えているのかわからない。

どんな考えがあろうとも、売られたことに変わりない。

私の不幸の代わりに、幸福に満たされているなど考えたくもない。

しかし、廃墟に来て数年になりますか。

廃墟がどのくらいの規模を持っているのかはわからない。

私の感覚からすれば、広大といえる。

ただ、そこらの家の中はもぬけの殻で、まともな住人は住んでいない。

一軒家や団地、学校やスーパーなどが地獄には散らばっている。

ただ、中身はほとんど空に近い状態だ。

獣達が街中を闊歩したり、私のような弱者は影に隠れながら獲物を狙ったりしている。

よく今まで生き延びれてきたものです。

今も子供だが、更なる幼少時には何もかもわからなかった。

死ぬような出来事に何度も出会いながらも、何とか生き抜いてきたんだ。

随分、落ち着いたと思う。

本当に抜け出せるのか?

不安でならない。

でも、収穫を止めてしまえば、生を止めるのと同じだ。

「強いな」

今日に限って風の音がやけに響いている。

近くから?

いや、不自然すぎる音は家の中からだ。

薄目にしながら探ると、何者かが近くで何かを探っている。

女か男か判別しがたいが、背中のシルエットは柔らかい曲線を描いている。

女と判断してもいいだろう。

女が探っているところは、収集した物資の数々が収められている棚や箱がある。

どうやって来たかは置いておく。

今は女の捕縛が最優先だ。

金に換えていない物が多く、もしかすると、巨額の金に成る物が置いてあるかもしれない。

女だからといって、タダで渡すのは軽率な行動だ。

時間がかかっているところ、物を盗むのは上手くはないのか?

目前の女のようにグズグズしていれば誰だって気付く。

逃げる事で鍛えられた脚力で、今の位置からタックルを決めることが出来たなら勝利だ。

まだ時間がかかりそうなので、一気にカタを付けよう。

私は女に気取られないように音を殺して背中に近づく。