妖魔03(R)〜星霜〜

千鶴に顔を合わせる事もなく、家から出る。

辺りは静けさと暗闇に包まれていた。

「はあ、はあ、はあ」

無我夢中で走り続ける。

距離からすれば、遠くはない。

あの時、子鉄は帰り道に当たる場所で事故にあったのだ。

「もうすぐ、だ」

走り続けた結果、事件現場の傍で女性の背中を見つけた。

息を整えて叫ぼうとした瞬間、子鉄の背後に何もない空間から黒い人影が湧き出る。

「子鉄えええええ!」

俺の声が届いたのか。

子鉄が背後を振り向くと黒の人影と対峙する。

ナイフを投げつける黒の人影。

子鉄はナイフを高く飛んで避けると、持っていた小刀で切りかかろうとする。

しかし、黒の人影は、再び空間の中へと姿を消した。

それ以降、黒の人影が現れる事はない。

「はあ、はあ、はあ、何とか、なったのか?」

子鉄は俺を凝視しているが、構えを解く事はない。

何故、近づいてこないのだろうか。

「アンタ、あいつの仲間なの?それとも、アタシを呼んだのは助けるため?」

少し、子鉄の様子がおかしい。

「何を、言ってるんだよ。俺だよ。お前も知ってる葉桜丞だよ」

「え?詐欺師?」

「んなわけあるか!」

今の疑問詞は、本気の時の物だ。