「お吟さん」

しかし、今の状態ではお吟さんもどうしようもないだろう。

「お兄ちゃん、周りの人が、いなくなった」

「そうか」

圧倒的な強さをお吟さんは持ちえている。

俺には存在しない、強さが。

お吟さんは、森の中を軍服の姿で歩いていた。

「どこに居てたのやら」

「ちょっとした、散歩アルよ」

そして、胸の間からリンゴを取り出して、食べ始める。

「変わらねえな」

最後になるというのに、笑いがこみ上げてきた。

先程、中途半端に寿命を使った反動なのか、限界が来ているらしい。

「本当に馬鹿な奴だ」

俺の前に座り、様子を伺う。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんを、治して」

チェリーは俺のために懇願する。

「出来ない」

「何で?」

「こいつは死ぬからさ」

お吟さんは冷静に告げた。