「はあ、はあ、はあ」

唇を噛みながら、走り続ける。

チェリーは人形のように引っ張られている。

「く、うう」

「お兄ちゃん、周りに、いる」

チェリーがゆっくりと顔を上げた。

表情に色はない。

そして、俺達はすでに囲まれていた。

結界があるのではないのか。

洋子は軽いと言っていた。

ならば、すでに破られたのかもしれない。

「絶対に、逃げるんだ。絶対に、出るんだ」

でも、どうやって?

どうやって、周囲にいる銃を持った敵から逃げるんだ?

仲間は誰もいない。

お吟さんも、ティアも、子鉄も、空気岩も、親父も、洋子も。

俺しかいない。

銃弾を避けられる程の速さなど、持ち合わせてはいない。

チェリーの能力によって、敵の位置は把握できる。

出来たところで何がある?

何かを仕込む時間もない。

「があ!」

考えているうちに俺の足を、銃弾が射抜いた。