足音が、どんどん大きくなってくる。

「早く」

子鉄と空気岩が俺の前に立った。

「ここで俺一人が、逃げるわけにはいかねえだろ」

「その子は、どうするの?」

チェリーに目線を移す。

チェリーは元気のないままで、足音の方向を見ていた。

「冷静に考えるのよ」

「だからって、見捨てるような真似、出来ねえよ」

「ここには、蛍さんや洋子さんもいるの、何とかなるわ」

「せっかく会えたのに、嫌だ」

また、遠のいてしまうのか。

「時間がない。もう、傍まで来てる」

どうすればいいんだ。

もし、相手がハンスだとすれば、時間稼ぎをして逃げ切れる可能性もある。

もし、ジャックだとすれば?

向こうが優勢となるルールを決められれば、勝ち目がない。

「主よ、守るべきは弱き者だ」

空気岩でさえ、俺の背中を押す。

「何でだ、何で、こんな世界なんだよ!」

迷っている暇はなかった。

チェリーの手を引いて、子鉄から遠のくように走り出した。