殴られること数分、意識を保ったまま終わった。

追手は気が済んだのか、命を取ることなく去っていく。

命に左右することに手を出す勇気はなかったみたいだ。

残ったのは顔面を晴らして青痣だらけになった体の私だけだ。

道の真ん中に留まれば、別の誰かに命を取られる。

建物の影へと痛む体を引きずり、追いやる。

「痛い」

影に着いたからといってじっとしていられない。

安全とは言えないが、自分の隠れ家に向かうまでは移動しなければならない。

弱者など虫のような存在だ。

見つかる前に隠れて逃げる、一般的だ。

自分の命を賭してまでリスクを犯さなければならないのは、強者が物資を独占しているからだ。

廃墟における派閥はいくつもあるし傘下に入れば恵んでくれるが、扱いは奴隷と変わらない。

派閥といっても、派閥内で他人を信じることはない。

奴隷になった時点で、廃墟から抜け出すことなど不可能。

私は、今いる地獄から早く抜け出して、少しでも安らぎを得たいとしか思っていない。

誰も信じず、誰も頼らず、派閥にも入らず、今よりも小さかった頃からお金をため続け、街の門番に金を納めて出ることを望んでいる。

出ることが出来たなら、早く保護してもらいたい。

何故、地獄が出来たかなど、理由は知らない。

人が苦しみ、悶え続ける場所を作っているのは、誰かが観察するためだけに置かれている金持ちの道楽ではないかと思う。

明るい世界から闇に落とされた人間達は、人身売買を行われ、誰かの資金に変わって地獄にいるのではないのか。

私もその一人だった。

地獄ではゴミから人間の命まで、物資はピンキリ。

物資を換金所に持っていけば査定され、金に変わるという仕組みだ。

金が道端に落ちているなど、髪の毛を捜すよりも難しいだろう。