地下一階では、兵士が襲ってくる事はなかった。

すでに、息絶えている人間がしかいなかったからだ。

チェリーの親達は人間を殺す事にためらいはないのか。

親父達は戦闘を避けようとすれば、避けられる。

チェリーの親達はまだ普通の人間にしか当たっていない。

もし、不死身の男やルールを決められる男に出会ったとすれば、勝ち目があるとは思えない。

「こっちか」

兵士達の倒れている方向に進めば、妖魔達に行き当たるのではないのか。

息が切れるのは早いが、走るしかない。

「はあ、はあ」

「丞さん丞さん」

「今度は何だよ!?」

「丞さんはあ、ティアとお」

珍しくも走りながらももじもじしている。

「ああ?」

「結婚するんですよねえ?」

「あああああああ!?ごほ、ごは!」

あまりの衝撃に、咽てしまう。

「はあ、はあ、お前、何言ってるんだよ?」

今ので、三割ぐらいの力を使ってしまったようだ。

「ティアはティアは、結婚指輪はローン30年分でかまわないですよう」

「何でローンとか知ってるんだよ!」

「あ!ティアはあ、心が広いですからあ、愛人も作っていいですよう」

「お前は俺の話を聞く努力をしろ!」

走りながらも延髄蹴りをかます。

「はああ、はあ、お前、後で、動けなかっったら、どうする、んだよ」

「丞さんみたいに運動不足でたるんだ腹を持ってても、病弱で軟弱な人間でも、しっかりお勤めしちゃいますよう」

駄目だこいつ、早く何とかしないと。