「私は、子鉄を傷つけた彼の元へは行かせたくないですの」

両手を両肩に置いて、離れないように誘導していますね。

青春の一ページといいましょうか。

映画にすれば、興行収入はそこそこいくのではないのでしょうか。

その時は、利益の3割程度を貰って、摩耶さんのために新しいお洋服を買ってあげたいですね。

「今日は退院日ですの。雲丸君も待ってるから、今のところは言う事を聞いて家に帰って欲しいですの」

「解りました」

落ち着いて判断を下しましたか。

野川さんは、去年の夏よりも大人になりましたね。

私のカレーパンの食い差しを食べても、誰も文句は言えませんよ。

「お見苦しいところをお見せしましたの」

「お二人のやり取りは映画にしても良いと思いましたよ、私としては胃袋の中身が膨れ上がるばかりですよ」

「あら、やだ、見世物ではないですの」

「仲の良い風景ですし、恥ずかしがる必要はどこにもありませんよ」

「あなたの感性を疑ってしまいそうですわ」

「おや、感性などという言葉を当てはめてくれるなど、一生ないと思っていましたよ」

感じる性、私からすれば程遠いと思ってしまいますよ。

「総長」

「そうね。雲丸君も待ってますし、この辺でお暇させてもらいますの」

野川さんの合図によって二人は車に乗って、去っていきましたね。

もう少しお話していたかったのですが、ご家族の時間を邪魔するわけにもいきませんからね。

「乾さんは親の鏡とも言えますね」

そういえば、私の家族はどこに行ったんでしょうかね?

摩耶さんのことではないですよ。

私の両親ですが、幼少の頃に私をとある世界に売り払って消えてしまいましたからね。

当初は、私も感情というものが存在してました。

長年、負の感情を感じることがなかったので、憎しみという物があやふやになっているんですよね。

物事に対して激昂できる皆さんをとても羨ましく感じますね。