起きれば、薄汚れたベッドの上で横たわっていた。

背を起こすと、わき腹に痛みが走る。

しかし、気絶する前よりは、痛みは緩やかだ。

包帯が巻かれており、治療が施されているおかげだろう。

「ここは」

天井に設置された蛍光灯が点かず薄暗く、ビルの一室であるという事は確認できた。

業務用の机がある事から、オフィスであった事を物語っている。

「残念アルな。テントが立ってないアル」

入り口に立っているのは白衣姿の広目だった。

そして、広目が指を指す先は私の股間である。

「治療したのは、あなたか?」

「そうアル」

「すまない」

広目の部下に先手を打たれたとはいえ、荒廃した世界で放り出される事無く、治療してもらった事には感謝すべき事だ。

お互いに素性を知らず、私は利益を生み出す人間ではない。

「若いのにテントを作らないなんて、男性ホルモンが足りてないアル」

言葉では想像できないほど、広目の表情は気だるさで満たされている。

「ここはあなたの部屋か?」

「んー、アチシのスポーツジム兼自室アル」

もっと豪華な物を想像したが、有様から見ればそうでもないらしい。

「四派閥の長ともあろう者の暮らしがこれとは、意外だ」

「どこでも夜伽は出来るアル。アチシの住処にしているところに他の奴らが住み着いただけある」

人徳があるのか、部下達が身体を目当てで住み着いているのかは謎だ。

ただ、見知らぬ人間に治療を施す人間だから、慕う人間も出てきておかしくはない。