「何でお前は行かないんだ?」

自分たちの仲間が見つかって、一人で自由になる事だって出来ている。

命をかける必要なんて、どこにもない。

以前の時のような、チェリーを守るという義務もない。

だとすれば、俺についてくる必要もないのだ。

「丞さんは記憶能力が桁違いに少ないみたいですねえ。ティアはー、丞さんのお世話係なんですよう」

「本当にそうか?」

「ティアはー、丞さんのお世話係でいいですう」

「何でお前は俺の世話係がいいんだよ。長老の命令は、もう聞く必要がないんだぜ?」

「だって、丞さんといると、ティアが面白いんですう」

「死ぬかもしれねえんだぞ?」

「丞さんの狭い心は、ティアの事を考えてくれてるですう。だから、丞さんといると面白いですう」

「死ぬのは怖い事なんだぞ」

「でもでもー、どこにいっても同じですよう。だったら、トンマでノロマな丞さんの傍にいたほうが、まだいいですう」

普通なら、トンマの奴の傍にはいたくないような気もするのだがな。

でも、深いところで言えば、ティアは面白いという理由ではないはずだ。

「いいのか?」

「丞さんはティアの声が耳から脳まで届くのに時間がかかるですう」

「解ったよ。来るなら来い」

「きゃあ、ティアに添い遂げて欲しいなんて、丞さんは性欲過多なんですう」

殴りかかろうとしていた拳を目の前で止めて、ティアの頭の上に乗せた。

「頼りにしてるぜ」

ティアは俺よりも強い。

どんな状況下でも抜け出せる力を持っている。

一人であるならば、な。

俺達は近くにいるかいないか空気岩を出来るだけ無視しながら、来た道を戻った。