「チェリーもいるんだ。まだあんた達がやるべき事はあるだろう。戦いじゃなくてよ」

チェリーの父親は首を振る。

「あんた達がやろうとしてる事は復讐でも何でもねえ。ただの犬死なんだよ!」

ハンスといい、先ほどの奴といい、勝ち目などどこにもない。

「君の訴えは素晴らしい。だが、もう遅いんだ」

動きを取る事なく、アゴに衝撃が走った。

そのまま、闇の奥へと意識が落ちていく。



目覚めるとアゴに痛みが走った。

頭も少しボーッとしているようだ。

辺りには、村妖魔達の気配はない。

しかし、一匹だけ残っていた。

「ティア?」

「丞さんはお寝坊さんですう。本当、手間と迷惑の権化と言われても文句はいえないですよう」

豚の姿から、人間の姿へと戻っている。

村妖魔達がやったのかもしれない。

最後とは思いたくはないが、ティアと話をしたい奴らもいたのだろう。

「いつもいつも、ありがとうな。お前に何度助けられたか、わかんねえよ」

俺は自然とティアにハグをしていた。

「あわわわわ、丞さんが発情期に突入したですう!ティアは淫らな世界に引き込むつもりですかあ」

「感謝してるんだよ」

少し力を込める。

「お前がいなけりゃ、チェリーと共にここまで来れなかった。だから、ありがとう」

ティアなそれ以降、何も言わなくなってしまった。

しおらしいというか、不気味な感じもしたが、たまにはいいかもしれない。

「チェリーは、行っちまったのか」

身体の駆動を確かめながら、立ち上がる。