妖魔03(R)〜星霜〜

「そ、某に恐怖を与えるとは!何と恐ろしい彼奴!」

馬鹿が身動きをとれないまま、身震いをしている。

「うるせえ!コイツがお前らに何かしたのかよ!コイツの母親がお前らを殺そうとしたのかよ!ふざけんじゃねえ!何もしてねえんだよ、何も、してねえ、んだ」

拳の肉が傷つくほどに強く握る。

「俺はコイツの幸せを壊した。憎まれても仕方ない。嫌がられても仕方ない。でも、コイツは、俺の好きだった人の大切なモンだ。だから、絶対に死なせない」

きっと、自分勝手だろう。

離れる事がチェリーにとっては気分が良くなる事かもしれない。

でも、今はその時ではない。

「チェリー」

俺は自分の服を破いて、チェリーの傷に巻きつけようとする。

しかし、遠ざかった。

「ティア、傷に巻けるなら、頼む」

「ブヒ」

そう簡単に感情を切り替える事なんて、無理だ。

「それで、どうするんだ?まだやるつもりかよ?」

振り返ると、馬鹿は元の位置に立ったままであった。

「某は、お主の言葉に感動いたした!」

浮浪者は刀を腰の鞘に直して、涙を流し始める。

「某は空気岩と申す」

「知ってるよ」

「何と!某はそなたのような者に知られているとは、またまた感動した!」

馬鹿さ加減に嫌気が差してきた。

空気岩の記憶能力はミジンコ並みというところだろう。

「気持ち悪いから泣くのは止めろ。っつうか、何でここにいるんだよ?お前、日本にいたんじゃねえのかよ?」

「む、某の苦労話を聞いてくれるか!?」

「断る。お前の話に付き合う程、暇じゃねえ」

「何と!これからがいいところだというのに!」

「まだ話のはの字も始まっていないのだが」

空気岩の脳みそには起承転結という文字は存在しないのだろう。