「ブヒ?」

様子が変だと思っていているのか、ティアは首を傾げている。

「悪い悪い。向こうに人影が見えたんでな」

ティア達に伝える必要はない。

味のしない実を拾い上げて、土を払う。

「見間違いだったぜ」

かじったところに土の侵食はない。

侵食。

今も尚、侵食によって寿命が短くなっている。

ネガティブになりながら、真ん中の筋だけを残してたいらげた。

「美味かったぜ」

疲労が完全に取れていない身体は重いが動くようだ。

約束した四時間は過ぎているだろうが、逆にそれが良かったのかもしれない。

「ティア、お前も寝ろ。しばらくすれば、起こす」

「ブヒ」

明後日の方向を向いているところから、言う事を聞くつもりはないらしい。

「お前は魔力が減っているし、ちゃんと休んでないだろ。少しでも仮眠をとっておけって」

「ブヒ」

頑固なところがあるのか、絶対にいう事を聞こうとしない。

「解ったよ」

無理矢理寝かせるのは不可能か。

今、触れようとしても避けられるのがオチだ。

「確認だけさせてくれ、動けるか?」

「ブヒ」

今のはイエスの返事。

「オーケーだ」

チェリーは今だに眠っているようだ。

「おかあ、さん」

カメリアの夢でも見ているのか。

目元には、辛い思いを表しているような涙が薄らと浮かんでいた。