「パパ、今度、どっか遊びに行こや」

摩耶さんは私の腕を掴んで、外出をせがんでいます。

その人を射止める仕草を見れば、近所の中年男性がお金を持って近寄ってきますよ。

「恩師、摩耶さん、この男と二人の外出は危険です」

「何言ってるんよ!パパとおったら誰よりも安全なんや!」

摩耶さんの大きな期待は、私を奮い立たせますね。

今日で退院出来るかもしれませんよ。

「では、摩耶さんが人生の転機を迎えるような場所に行きましょう」

「わあ!パパ!好きや!」

喜びのあまりアゴがはずれてしまうかもしれませんね。

「私も行きます」

「江口さん家の仕事はいいんですか?」

「恩師、摩耶さんを一人で行かせれば、確実にあなたの色に染められてしまいます。私がなんとしても食い止めなければなりません!」

葵さんは夢を語るように燃えていますよ。

体から染み出るオーラから神といわれたヴィシュヌが見えてきそうです。

江口さんの家の埃を処分せずに、摩耶さんと共に歩んでいただけるのは感謝すべきことなのでしょう。

江口さんも優しい方ですから、葵さんに対して永久に休暇を出していただけるでしょう。

摩耶さんは学校であった事などを話していました。

耳を傾ければ、平和な世界を肌で感じることが出来ます。

摩耶さんの遠回りな説明であっても、未来を安泰させるのではないかと思ってしまいますよ。

「それでな!ウチな、ぶん殴ってやったんや!」

「それは、用心棒としてやっていけるくらい心強いですね」

摩耶さんは、クラスメイトの男の子が女の子に求愛行動を取ろうとしたところで、秩序のために立ち上がり事態を収拾させたようです。

「そやろ!男が女を殴ろうとする奴は許されへんかったんや!」

「さすが、恩師、摩耶さんです。そこで相手を諌める勇気を持っている事に、感動しました」

「将来は、人の護衛にあたる仕事をオススメしたいですよ」

「パパがそう言うんやったら、頑張ってなるで!」

ガッツポーズを取る摩耶さんは将来設計を頭の中で立てているようです。