ティアは俺の服を口で引っ張って、木陰に隠した。

チェリーもティアも俺の傍で身を潜めている。

扉の近くからは、音を立てない限りは俺達の様子は伺えないようになっている。

しかし、気配で勘付かれるという事があるかもしれない。

だから、疲れているとはいえ、気を抜けない。

「ブヒヒ」

「ティア姉ちゃんが休めだって」

チェリーがティアの言葉を訳しているようだ。

「言葉、分かるのか?」

「ううん、でも、そんな感じだと思う。チェリーも、お兄ちゃんには休んで欲しい」

「はは、心配、かけてるな」

「いいんだよ。お兄ちゃん、無理、しすぎてるから」

俯き気味で、俺の事を気遣う。

先ほど、少しと言ったが、本当は今にでも横になりたいに違いない。

「チェリー、お前は強い子だ。でも、俺だってお前に休んで欲しいと思ってる。ティア、お前は」

三人とも寝こけてしまっては、敵が来た時に危険に晒されるだろう。

「ブヒ」

「見張り、だって」

自分から買って出るなんて意外すぎる。

人間時がどうであれ、好意を無駄にするわけにもいかない。

「すまねえな。4時間程度で一度起こしてくれ、そこで一度様子を見る」

身体の調子が戻っているとは思えないが、ティアにばっかり無理をさせるわけにもいかない。

「ブヒヒ」

彼女の返事と共に眼を閉じた。

目の色は消えたまま。

次の死んだ部位が何処なのか解らない。

能力を使ったのだからこそ、死んでいるのは確かだ。

死んでないのならいいのだが、都合よくはいかない。

落ち込み加減になりながら考えている内に意識は奥へ奥へと潜っていく。

きっと疲れていたんだろう。

意識がなくなる速度はいつも以上だった。