近づいていくと、影の内容がわかってくる。

「お前アルか」

気配を感じたのか、俺が声をかける間もなかった。

お吟さんは俺を見ずに水溜まりを見たままだ。

よく見ると、お吟さんは異変を来たしていた。

「その耳と尻尾、どうしたんだよ?」

頭の上には狐のような獣の耳、お尻付近には獣の尻尾が存在していた。

「似合うアルか?」

「似合ってる。でも、俺が気絶する前にはなかった気がしたんだが」

尻尾を動かしながら、水で自分の容姿を確かめているらしい。

「また知りたい病か?」

「まあな」

「お前も節操がなくなってきてるな」

「え?って、解るのかよ?」

「匂いからしてあの娘の母親辺りか」

「う」

鋭いとか、そんな問題を超越している。

「葉桜の血さ。それを責める気はない」

「でも」

「お前の大好きなアホ娘の娘の事をどうのこうの言ったところで無様な言い訳にしかならないさ。反省はしても挙動不審にはなるな、堂々としておけ」

「お吟さん」

「それで、私の耳と尻尾の事だったか?」

「ああ」

「自分自身の変鎖につぎ込んでいた魔力を、あいつらに少し使ったのさ。だから、今こうして耳と尻尾がある」

「そうか」

俺はお吟さんの隣に座る。

「ありがとう」

「その分、お前には働いてもらうからいいさ」

「精魂、尽き果てさせるつもりかよ」

「お前が望むなら、あらゆる技術で枯れ果てさせてやるアル」